現代社会の中でがんはめずらしい病気ではありません。日本人の場合、生涯で2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなっています。年間のがんによる死者は全国で約37万人(男性22万人、女性15万人)にもなります。部位別の死者数で言えば下の表およびグラフの如く、男性では肺がん、胃がん、大腸がん、女性では大腸がん、肺がん、膵臓がんの順に多くなっています。一方、罹患率(その病気にかかる割合のことです)のグラフをみると男性では前立腺がん、女性では乳がんがそれぞれ1位となっています。これは前立腺がんや乳がんは罹患する人の数は多いものの、一部の予後不良なタイプを除けば、比較的生存率が高い(悪性度が低い)ということを表しています。
●2018年の死亡数が多い部位は順に
出典元:国立がん研究センターがん情報サービス元データ:人口動態統計による全国がん死亡データ(エクセルのnumberシートを参照)
出典元 | : | 国立がん研究センターがん情報サービス |
元データ | : | 人口動態統計による全国がん死亡データ (エクセルのnumberシートを参照) |
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
男性 | 肺 | 胃 | 大腸 | 膵臓 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 胃 | 乳房 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸10位 |
男女計 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸7位 |
●2017年の死亡数が多い部位は順に
出典元:国立がん研究センターがん情報サービス元データ:全国がん登録による全国がん罹患データ(エクセルのnumberシートを参照)
出典元 | : | 国立がん研究センターがん情報サービス |
元データ | : | 全国がん登録による全国がん罹患データ (エクセルのnumberシートを参照) |
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
男性 | 前立腺 | 胃 | 大腸 | 肺 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸5位 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸7位 |
総数 | 大腸 | 胃 | 肺 | 乳房 | 前立腺 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸6位 |
●どの部位のがん死亡が多いか
出典元:国立がん研究センターがん情報サービス元データ:人口動態統計による全国がん死亡データ(エクセルのnumberシートを参照)
出典元 | : | 国立がん研究センターがん情報サービス |
元データ | : | 人口動態統計による全国がん死亡データ (エクセルのnumberシートを参照) |
下のグラフはがん罹患率の年齢による変化を見ているものです。男女とも50歳代から急激に増加し90歳を超えると減少してくる傾向があります。20歳代から50歳代まではむしろ女性の方が多いのですが、60歳代になると急激に男性のがんが増加しているのが分かります。
●がん罹患率~年齢による変化 全がん
出典元:国立がん研究センターがん情報サービス元データ:全国がん登録による全国がん罹患データ(エクセルのrateシートを参照)
出典元 | : | 国立がん研究センターがん情報サービス |
元データ | : | 全国がん登録による全国がん罹患データ (エクセルのrateシートを参照) |
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現在、宮崎市の40歳以上に行なわれているがん検診の項目は男性では肺、胃、腸、前立腺、女性で肺、胃、腸、乳腺、子宮となっていますが、これは前述の罹患率、死亡率を見れば合理的な選択といえると思います。膵臓がんや肝臓がんも死亡率は高いのですが、膵臓がんは検診レベルでの早期発見が非常に困難であること、またある程度早期で見つかったとしても治癒できる可能性が低い病気です。また肝臓がんに関してはある程度原因(C型肝炎、B型肝炎、大酒家)が分かっており、検診と言うよりは、対象をある程度絞り込んで検査を行なう方が合理的と考えられます。
下のグラフはがんと診断されてからの部位別の5年生存率をみています。検診の項目である胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、前立腺がん等は比較的生存率が高いことが分かります。
●がんと診断されてからの生存率 5年相対生存率
出典元 | :国立がん研究センターがん情報サービス |
元データ | :地域がん登録によるがん生存率データcancer_survival(1993-2011).xls(エクセルの最新データ(性別)シートを参照) |
出典元 | : | 国立がん研究センターがん情報サービス |
元データ | : | 地域がん登録によるがん生存率データcancer_survival(1993-2011).xls (エクセルの最新データ(性別)シートを参照) |
がん検診を受けない方にうけない理由をお聞きすると、大抵の方が「症状がないから」と言われますが、例外的なものを除いて、殆どの早期がんで症状はありません。痛みがでたり、食欲がなくなったり、痩せたり、血痰や血便がでる等の場合、ステージIII以上の進行がんや末期がんである事が少なくありません。また、ご高齢の患者さんは「もう年だから」と言われる方もおられます。しかしながらがんは老化現象の一つでもありますし、高齢者こそ多いという認識が必要です。また、がんで死ぬと言うことは多くの場合、かなりの痛みや苦しみを伴うもので、眠るように安らかな死というものは期待できません。七転八倒し、本人も家族も苦しまれるケースも少なくありません。当然ながら癌は早期発見であるほど治療も楽であり、生存率も高くなります。治療法が限られる高齢者こそ早期診断が重要となるともいえます。
私は福岡のがんセンターをはじめとする専門施設や関東の最先端の医療機関に勤務し、多くのがん患者を見てきました。現在は地域医療にたずさわる身として、宮崎からがんで亡くなる人を一人でも減らしたいと考えています。がんは身近な病気です。過信や油断は禁物です。特に胃がんや大腸がんは早期発見すれば殆ど治る病気です。症状のない方も是非がん検診を受けるようにしてください。